第12回は、去る2月3日に開催された日本能率協会主催 第1回
「人材育成シンポジウム」における、ASTDの日本支部であるASTD
ジャパンの委員会活動報告をピックアップしました。
「グローバルリーダーシップ開発に関する考察と提言」と題したリーダー
シップ開発委員会の報告の概要を2回にわたって紹介します。
■講演概要
(ASTDジャパン リーダーシップ開発委員会発表および資料より)
・ASTDジャパン リーダーシップ開発委員会では、1年間にわたり、
「グローバルでアイデンティティを発揮するために求められるリーダー
シップを開発するには?」というテーマで調査研究を行ってきた。
・グローバル展開を加速させる日本企業にとって、グローバルリーダー、
特に現地を統括するカントリーマネジャーの育成は緊急の課題である。
・そこで、委員会では、1カ国以上の海外現地法人を統括する「カントリー
マネジャー層」に求められる能力、および、グローバルリーダーを発掘、
育成、活用するための組織・人材マネジメントの仕組み・運営を中心に、
調査(インタビューおよび文献調査)と討論を行った。
・まず、「グローバルで通用するリーダーに必要な力」の仮説を設定し、現役
のグローバルリーダーやグローバルリーダー経験者10名へのインタビュー
からその仮説を検証した。
・その結果から得た結論は、
-グローバルで通用するリーダーは、組織マネジメント力、戦略策定・
実行力、アイデンティティ原動力、アイデンティティ発信力、多様性受容力、
コミュニケーション力(論理性&感性)、正義感という仮説で設定した「必
要な力」について、バランスよく備えている
-特に、下記の力が共通して高い
①判断軸をぶらさずに本質をとらえて決断する力
②組織リーダーの役割へのコミットメント、オーナーシップ意識
③利害関係が異なる多様性が高い組織内で調整、合意形成を図る力
④社会貢献意欲
⑤高い傾聴力、観察力をもとに、状況や人の感情を読み取る力
-ネイティブのビジネス・エグゼクティブが経営のシーンにおいて使う
ような高い英語力は、必ずしも必要とは言えない
-グローバルで活躍している日本人リーダーであっても、メッセージをイン
パクトある簡潔な言葉で伝える力は、外国人リーダーに比べて相対的に
低い
・グローバルリーダー(40代の海外現地法人トップ)を自社で育てるには、
グローバルリーダー候補者を絞り込んだ上で、20代に異文化体験、30代
までに組織マネジメント経験、40代までに修羅場経験(事業再生、新規
拠点立ち上げなど)の機会を計画的に提供することがカギとなる。
■エレクセの所感
・これまでの、海外拠点と本国の調整役のようなカントリーマネジャーでは、
日本企業の製品やサービスをグローバル市場で広めていくことが難しい。
求められているのは、ローカルの人材と共に現地市場を開拓していく「切り
込み・突破型」のビジネス展開を推進できるカントリーマネジャーだ。
・海外で「切り込み・突破型」のビジネスを展開させるということは、「異文
化」+「修羅場」という二重の困難に立ち向かうことだ。グローバルリーダー
育成というと、語学や異文化コミュニケーションに焦点をあててしまいがち
だが、組織マネジメント経験や修羅場経験の重要性を忘れてはいけない。
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第13回は、前回にひきつづき、去る2月3日に開催された日本能率協会
主催 第1回「人材育成シンポジウム」における、ASTDの日本支部である
ASTDジャパンの委員会活動報告をピックアップしました。
「グローバルリーダーシップ開発に関する考察と提言」と題したリーダー
シップ開発委員会の報告の概要の2回目を紹介します。
■講演概要
(ASTDジャパン リーダーシップ開発委員会発表および資料より)
・ASTDジャパン リーダーシップ開発委員会では、1年間にわたり、
「グローバルでアイデンティティを発揮するために求められるリーダー
シップを開発するには?」というテーマで調査研究を行ってきた。
・グローバルで通用する日本人のカントリーマネジャー(1カ国以上の海外
現地法人を統括するマネジャー)を自社で育てるには、人事方針、採用、
配置、能力開発、評価など組織・人材マネジメント全体において、これ
までの日本企業の仕組みと運営を変えていく必要がある。
・同委員会では、グローバルリーダーを発掘、育成、活用するための組織・
人材マネジメントの仕組み・運営を中心に、先進企業事例の文献調査と
討論を行った。
・その結果から得た結論は、
-グローバルに展開する日本企業の組織・人材マネジメントは、「自社の
アイデンティティを固める」および「ダイバーシティを拡げ活用する」ことを
目指す必要がある。
-そのために、以下の6つの対策があげられた。
■自社のアイデンティティを固めるために…
対策①:多様な人材を発掘、登用するためグローバル共通の人事制度の
プラットフォームを構築する
対策②:多様な人材から成る組織に求心力を働かせるため、経営理念を
共通言語で明文化し、定着に向けた双方向のコミュニケーションの
場を設定する
■ダイバーシティを拡げ活用するために…
対策③:グローバル視点での経営を実践するため、海外経験者、外国人を
本社の経営幹部や役員に登用する
対策④:各国・地域のローカル市場における事業視点を強めるため、採用・
人事評価の権限を、コーポレート・本社主体から事業部主体へ転換する
対策⑤:組織内の多様性を広げるため、異文化の体験機会を広げ、雇用
形態を多様化する
対策⑥:多様な人材を活用するため、評価尺度の力点を、年功や経験年数
ではなく、期待役割や能力におく
■エレクセの所感
・グローバルに展開する企業のしくみは、「全体」と「個」の両方に焦点を
あてなければならない。現地市場に適したビジネスを展開するために、個々の
現地の事情に則した人材マネジメントを行う一方で、多様性のある組織を束ねる
経営理念を確立、浸透させていく。
・さらに、国籍や国境を越えて多様なリーダー人材プールをつくることも必須だ。
優れた人材には、若い頃から短いローテーションを繰り返させ、国境を超えた
多くの経験をさせる。
・そこにあるのは、現地支社ごとに、やり方は違えども、世界中の社員が「ひと
つの企業グループの社員」として同じゴールを目指し働く姿であり、決して
「本社社員」と「ローカル社員」に分けられるものではない。
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第14回は、去る2月3日に開催された日本能率協会主催 第1回
「人材育成シンポジウム」における、ASTDの日本支部であるASTD
ジャパンの委員会活動報告「グローバルリーダーシップ開発に関する
考察と提言」の概要を前回にひきつづき紹介します。
■講演概要
(ASTDジャパン リーダーシップ開発委員会発表および資料より)
・ASTDジャパン リーダーシップ開発委員会では、1年間にわたり、
「グローバルでアイデンティティを発揮するために求められるリーダー
シップを開発するには?」というテーマで調査研究を行ってきた。
・企業がグローバルリーダー育成と活用に取り組み、加速させるにあたり、
組織内で客観的指標を用いて取り組みの成果を測り、組織成果を示して
いくことが必要となる。その達成指標(KPI)として、どのような指標がふさ
わしいかを文献調査を参考に討議、検討した。
・その結果、成果として測定する組織力強化の度合いとして、以下の3つが
挙げられた。
1)グローバルリーダーの育成・活用度
2)アイデンティティ確立・浸透度
3)ダイバーシティ活用度
・1)グローバルリーダーの育成・活用度を測る指標として考えられるのは、
-グローバルの主要なポジションにおける外国人の配置の有無(Yes/No)
-主要ポジションにおける国を越えてローテーションされた人の比率
-主要ポジションに国外から着任している人の比率
-グローバルリーダー候補者が全社員に占める比率
-グローバルリーダーの能力開発体系・プログラムの有無(Yes/No)
-実用的な外国語コミュニケーションプログラムの有無(Yes/No)
・2)アイデンティティ確立・浸透度の具体的な指標として挙げられたのは、
-(社員満足度調査などを通じて)企業理念がグローバル規模で浸透しているか(Yes/No)
-企業理念の浸透度が、経営陣や経営幹部の評価基準に入っているか(Yes/No)
-企業理念浸透のための海外におけるタウンミーティングの回数、参加比率、責任者の参加比率
・3)ダイバーシティ活用度を測る指標として考えられるのは、
-外国人役員の有無(Yes/No)
-本社におけるライン長の日本人以外の外国人比率
-グローバル拠点におけるライン長の母国以外の外国人比率
-採用応募者における外国人比率(海外の人たちにとって魅力があるか
の指標として)
-新卒一括採用入社でない人(留学生など)の比率
-マルチカルチャーやクロスカルチャーの研修参加者比率
・これらの指標によって、グローバルリーダーの育成・活用を通じた組織
強化の度合いを測ることができると考えた。
■エレクセの所感
・グローバルリーダー育成・活用の取り組みは一朝一夕で結果が出るもの
ではないが、だからこそ、客観的な達成指標とその進展度合いを具体的に
目に見えるかたちで示す、成果測定が必要だ。
・人事部門が、グローバルリーダー育成・活用のための人事制度の構築、
人材育成プログラムの開発・実施、経営理念のコミュニケーション手法など
の取り組みに勢いをつけるためには、経営のビジネスパートナーとして、
トップや周囲を説得し、納得を得る材料として、現状や成果の把握が可能な
達成指標(KPI)を設定し、活用したい。
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■講演概要
・AMA(アメリカン マネジメント アソシエーション)とi4cpが2010年に
グローバルリーダーシップ開発調査を行った調査によると、回答企業
全体の4割がグローバルリーダーシップ・カリキュラムを行っている。
(回答企業数:939社、回答企業の内訳:米国企業6割、米国以外の企業
4割)
・カリキュラムの内容では、採用企業が多い順にトップ5は、①クリティカル・
シンキング&問題解決、②協力関係構築、③クロスカルチャーチームの
構築・リード、④チェンジマネジメント、⑤グローバル戦略の実行だった。
・MPI(売り上げの伸び、市場シェアなど市場成果)とGLSI(スキルの伸び
など人材育成成果)の2つの指標で、カリキュラムの成果を測ると、MPIと
相関が高いカリキュラムは上記②③④で、GLSIと相関が高いカリキュラムは
トップ5には入っていなかった。
・人材育成投資の評価指標(参加者の反応、学習到達度、行動変容、業務
成果、事業成果、顧客満足)の中で、MPIとGLSIの両方に相関が高かった
のは学習到達度だった。
・プログラムの実行段階での経営層の関与が、MPI・GLSI両方の成果と
相関が高かった。一方で、企画段階や講師としての経営層の関与は、
MPIやGLSIとの相関が高くない。
・人選の仕方と両方の成果指標との相関では、MPIと相関が高いのが、
①直面するニーズ、②候補者の業務評価、③360度評価、の3つであり、
GLSIと相関が高いのは、①サクセッション・プラン、②直面するニーズ、
③ハイポテンシャルなど である。
■エレクセの所感
・米国企業だけでなく世界各国の企業約1000社が回答した調査であり、
グローバルリーダーシップ開発に関する最新データとして信頼性が高いと
思われる。
・プログラムの実行段階での経営層の関与がMPIとGLSIの両方と相関が
高いという調査結果は、改めてリーダーシップ開発に対する経営層の関与の
重要性を示している。とりわけ、実行段階での経営層のプレゼンスが大切で
あることを再確認できた。
・リーダーシップ開発を通じて市場成果も上げたいのであれば、日常の業務
評価や360度評価を取り入れることで、経営層が恣意的に選びがちな
後継者やハイポテンシャルの人選を透明性高いものにする必要があるようだ。
次回は、グローバルリーダーシップ開発プログラムの事例として、世界
200カ国以上の国でビジネスを展開する大手運輸会社UPSを取り上げます。
(UPSは人材育成の取り組みで2010年度にASTDから表彰されました。)
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■講演概要
・UPSは、フェデラルエクスプレスと並ぶアメリカの大手運輸業。グローバル
展開が加速する中でのリーダーシップ開発モデルを発表。今年のASTD
アワードにも選ばれている。
・UPSのリーダーシップ開発モデルの特徴は、下記の4点である。
①事業戦略を起点
②4つの事業ごとにJob(業務)モデルを30設け、Jobモデルごとにリーダー
シップ・コンピテンシーを定義
③タレント・マネジメント、教育研修プログラム、企業内大学を連動させる
④向上させたいパフォーマンスを測るKPIを設けて、リーダーシップ開発の
フォーカスを定める
■エレクセの所感
・オーソドックスにやるべきことを当たり前に行っているというのが第一印象。
しかし、事業戦略・運営と人材育成、配置・異動と教育研修、親会社と別会社
化した企業内大学がバラバラに扱われ、それらを連動させることが難しい日本
の大企業では、この当たり前のことを実現するのが難しい。人材マネジメント
サイクルが分離・断絶していることが、グローバル人材育成上の大きな欠陥に
なっていることを改めて実感した。
・縦割りに分割された人事機能を俯瞰する役目は、経営トップまたは事業トップが
負うべき。しかし、多くの日本企業では、人事機能を労務管理や人事考課という
狭い専門領域に留め、欧米とは異なり、優秀な人を見つけて登用し成長を支援
するという「本来の人事機能」をラインに委ねてこなかった。その結果、経営トップ
や事業トップが「人事センス」を習得するチャンス、人事を自らの責務と認識する
機会が少なかったことが、人材マネジメントと事業戦略・運営がかみ合わない
原因になっているのではないか。
・日本の大企業が教育研修の中身だけUPSの真似をしても、上記の現状では、
施策と予算がバラバラになって、人材育成投資が無駄になるおそれがあるだろう。
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■講演概要
・古代のエジプト、ギリシャ、中国の時代から最近まで、理想のリーダーシップ
像の変遷をカバー。
・最近のリーダーシップ論として、ジム・コリンズの5レベル論、ジョン・マックス
ウェルの5段階論、マーカス・バッキンガムの個人の強みへのフォーカス、と
いった考えが紹介されていた。
・これからのリーダーシップ論の潮流として、ブルーオーシャン、グローバルなど
13のキーワードが挙げられた。
■エレクセの所感
・リーダーシップ論の変遷を振り返ってみて、なぜリーダーシップの定義が時代、
組織、人によって異なるかが腹落ちした。それは、リーダーという存在(ポジション
ではない)に対して人々が求めるものが、時代、組織、個人で異なるからであり、
それぞれの価値観を体現したものだからだ。
価値観に唯一絶対の解はないのだから。
・では、近未来に求められるリーダーシップのキーワードは何だろう?
本セッションでは13の潮流を挙げていた。それらを眺めて思い浮かんだ
キーワードは、①グローバル、②文化・価値観のダイバーシティ&オープン、
③強みを持ち自律したフォロワー&サーバントなリーダー、④組織へのエン
ゲージメント、⑤オープンなコミュニケーション・組織運営を可能とする技術革新、
の5つ。
・セッションを終わって私の頭に浮かんだ問いは、「グローバルで文化・価値観が
多様な世界でも、リーダーはどこでも通じる単一のビジョンを示すことが望ましい
のか?また、それは可能だろうか?」だ。
・結局、講演者が講演の最後に引用していたドラッカーの言葉に行き着くの
だろう。
“The best way to predict the future is to create it.”=「自分で自分の未来を
つくれ」
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